『パディントン発4時50分』のあらすじ、真相、原作小説との違い、考察、感想などをまとめています。ジェラルディン・マクイーワンさん主演のドラマ版ミス・マープルシリーズの第三話です。マープルの友人が電車の客室から、隣を走る電車の中で起きた殺人を目撃します。
あらすじ
エルスペス・マギリカディ夫人は友人のミス・マープルに会うため、パディントン駅16時50分発の列車に乗車しセント・メアリー・ミードへ向かう。途中、客室からすぐ隣の線路を走る列車を眺めていると、何者かが女性の首を絞めている様子を目にしてしまう。夫人はこのことをすぐに車掌に伝えたのだが、翌日、新聞には何も載っていなかった。
不審に思った夫人とマープルが警察に尋ねると、死体はどこからも見つからなかったと言われてしまう。殺人は間違いなく起きたと確信するマギリカディ夫人とミス・マープルは犯人が女性の死体を列車から捨てたと推測し、クラッケンソープ家の敷地内に死体があると考える。そして、死体を見つけ出すために、マープルの姪であるルーシー・アイルズバロウに潜入捜査を依頼する。
登場人物とキャスト
主な登場人物とキャストをまとめます。ドラマ冒頭で亡くなったのはルーサー・クラッケンソープの妻です。子供達や主治医のクインパーが集まっており、彼らはのちに容疑者となります。列車の事件が起きた時点で、ルーサーは病弱となり、長男であるエドマンドは戦死、次女のイーディスも亡くなっています。
イーディスはほとんど登場しませんが、戦死したエドマンドは度々名前が登場します。そして、エドマンドにはマルティーヌという妻もいたようですが、行方不明になっています。
名前 | キャスト | 説明 |
---|---|---|
ミス・マープル Miss Marple |
ジェラルディン・マクイーワン Geraldine McEwan |
老婦人の名探偵 |
エルスペス・マギリカディ Elspeth McGillicuddy |
パム・フェリス Pam Ferris |
マープルの友人。殺人を目撃する |
ルーシー・アイルズバロウ Lucy Eyelesbarrow |
アマンダ・ホールデン Amanda Holden |
マープルの姪 死体を探すため、家政婦として忍び込む |
トム・キャンベル Tom Campbell |
ジョン・ハナー John Hannah |
刑事 マープルの友人 |
ルーサー・クラッケンソープ Luther Crackenthorpe |
デビッド・ワーナー David Warner |
クラッケンソープ家当主。ほぼ寝たきり 父親が製菓業で成功 |
エマ・クラッケンソープ Emma Crackenthorpe |
ニーヴ・キューザック Niamh Cusack |
クラッケンソープ家の長女 主治医のクインパーとは恋仲 |
アルフレッド・クラッケンソープ Alfred Crackenthorpe |
ベン・ダニエルズ Ben Daniels |
クラッケンソープ家の次男 飲んだくれの怪しい男 |
ハロルド・クラッケンソープ Harold Crackenthorpe |
チャーリー・クリード=マイルズ Charlie Creed-Miles |
クラッケンソープ家の三男 小太りな女性が妻 |
セドリック・クラッケンソープ Cedric Crackenthorpe |
キアラン・マクメナミン Ciarán McMenamin |
クラッケンソープ家の四男 画家 |
ブライアン・イーストリー Bryan Eastley |
マイケル・ランデス Michael Landes |
次女イーディスの夫 子連れ |
デヴィッド・クインパー Dr. David Quimper |
グリフ・リス・ジョーンズ Griff Rhys Jones |
主治医 |
事件概要
クラッケンソープ家に潜入したルーシー・アイルズバロウが敷地内の霊廟で本当に死体をみつけます。しかし、死体の身元はなかなか明らかにならず、誰が死んだのかわからない状況が続きます。
マギリカディ夫人が現場を目撃しているので、犯行時刻ははっきりしています。この時間帯について関係者のアリバイが調べられますが、嘘が混じっているので全く役に立ちません。ぼんやりとしたまま時間は過ぎて行き、マルティーヌ・クラッケンソープなる人物の影が見え始めます。
マルティーヌ・クラッケンソープは戦死したエドマンドの妻で、子供がいるようでした。もしも、子供がいるならば、遺産はその子供にも相続されることになります。そんなマルティーヌがクラッケンソープ家に手紙を届け、列車で屋敷を訪れようとしているようでした。このことから、被害者はマルティーヌだと推測されますが、はっきりしません。
そうこうしているうちに、クラッケンソープの一家が毒を盛られます。主治医が駆け付けますが、次男のアルフレッドは死んでしまいます。毒は少量でしたが、アルフレッドは酒浸りで体弱っていたため、死に至ったと考えられます。動機は遺産と考えられ、相続人である弟達が疑われますが、いずれの人物にも毒を混入させることはできたようでした。なお、毒が入っていたのはカレーと考えられており、実際に毒も入っていました。
そもそも霊廟でみつかった死体は何者だったのかという疑問について、警察はアンナ・ストラビンスカというバレリーナが行方不明になっているという事実を掴みます。しかし、死体がアンナだとしても、クラッケンソープ家とのつながりは全く明らかにされません。
ネタバレ
殺人犯は主治医のデヴィッド・クインパーです。クインパーはエマ・クラッケンソープと結婚するために、列車内で妻を殺しました。その妻というのがバレリーナのアンナ・ストラビンスカで、霊廟で見つかった死体でした。カトリック教徒だったアンナは離婚を拒み、さらに、お金も要求していました。なお、死んだと疑われていたマルティーヌは生きています。
アルフレッドを殺したのもクインパーで、理由はM・クラッケンソープの領収書を仕込んでいる姿を目撃されたからです。アルフレッドはクインパーを脅しており、大金が手に入ると嘯いていました。なお、クインパーが毒を入れたのは飲み物であって、カレーではありません。少量の毒を入れて呼び出されるようにし、診察する振りをしてアルフレッドを殺害。そのあとに、カレーに毒を入れています。
マルティーヌの手紙は、本人ではなく、クインパーが送ったものです。クインパーのねらいは遺産相続の争いにみせることにありました。
登場人物の隠し事は下記の通りです。
- エマ・クラッケンソープ
途中までマルティーヌ・クラッケンソープからの手紙を隠していた。アリバイに関してはブライアンと外出していたと嘘をついている - ハロルド・クラッケンソープ
マルティーヌを暴行したことがある - セドリック・クラッケンソープ
アリバイについて、実は画家をやめて公務員試験を受けていた - ブライアン・イーストリー
アリバイについて、実は交通事故を起こしており、それを子供に隠そうとしていた
結末
最後、ルーシー・アイルズバロウは、ブライアン・イーストリーではなく、刑事のルーシー・アイルズバロウを相手に選びます。
原作とドラマの違い
ドラマと原作について、ストーリーなどは概ね同じです。やや大きな違いは被害者の数で、原作ではハロルドも殺され被害者が三人となります。動機も違っており、原作は遺産目当て、すなわち金ですが、ドラマは愛する人と結婚するためという動機になっています。その他の違いは下記の通りです。
- ドラマは最後の謎解きが列車内で行われたが、原作はラザフォード・ホール
- ドラマでは目撃者になったためアルフレッドが殺されているが、原作は相続人を減らすために殺している
- 原作では、セドリックが次男でアルフレッドが四男
- トム・キャンベル刑事はドラマオリジナルのキャラクター
- 原作ではクインパーのファーストネームが登場しない
感想
殺人を目撃したのに死体がみつからないという発端に引き込まれましたし、死体をみつけるために潜入するというのもまさにアドベンチャーという感じでした。ただ、誰が死んだのかなかなかわからなかったので、もやもやしたりしましたが、それもまたミステリーだったと思います。あとは、目撃者となった夫人の寝言も、ベタですけど笑ってしまいました。
考察
死体だと思われていたマルティーヌ・クラッケンソープが生きていたというのは、かなりなどんでん返しだったと思います。誰が死んだのかだいぶ曖昧になっていたのは、断言してしまうとフェアではなくなってしまうからかもしれません。
まとめ
ミス・マープル「パディントン発4時50分」について、あらすじ、真相、ドラマと原作の違い、感想などをご紹介しました。
犯人
- デヴィッド・クインパー
Dr. David Quimper
愛のために殺人を犯したということなのだが、人を殺したという部分に愛を感じるかどうかは微妙ではないかと思ったりする。そこまでしてくれたなんて、と思うのはちょっと異常な愛情のような気もしてしまう。
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