「逆転美人」は藤崎翔(ふじさき・しょう)氏の小説で、香織という女性の半生が手記で語られるミステリーです。この記事では、物語のあらすじと真相、みんなの感想などをまとめています。
項目 | 説明 |
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タイトル | 逆転美人 |
評価 | |
著者 | 藤崎翔 |
出版社 | 双葉社 |
シリーズ | 単発 |
発売日 | 2023年10月 |
Audible版 | なし |
あらすじ
シングルマザーの香織(仮名)が“逆転美人”というタイトルの手記を四葉社から出版する。そこには、香織が子供の頃に受けたいじめの数々から始まる壮絶な人生が記されていた。
とても美人だった香織は容姿が原因となって、小学生の頃から同級生にいじめられてしまい不登校となる。中学、高校でも当然のようにいじめに遭い、教師の浮気相手にもされ、勉強どころではなかった。高校を中退し、文章を書くのが苦手な香織が最初に働き始めたのはコンビニのアルバイトで、その後、水商売に就くことになる。
仕事の人間関係もうまくいかなかったが、のちに、香織はコンビニで知り合った男性と結婚することになり、娘を授かる。しかし、寝たばこによる火災で、夫が亡くなってしまう。このとき、香織は身ごもっており、火災の数ヶ月後に男の子を出産することになる。残された母子は香織の父親のもとに身を寄せる。
ある日、香織の父親も車の事故で死んでしまう。車には下校中だった香織の娘も乗っており、命に別状はなかったが、下半身不随となってしまい、車いす生活を余儀なくされる。娘が車に乗っていたのは、通学に使っていた自転車がパンクしたからであり、香織はパンクが美人の娘に対する嫌がらせだと考える。
そしてより深刻な事件が起きてしまう。香織の娘に指導していたM教諭という男性が睡眠薬を使って香織や娘を眠らせ、香織に暴行しようとしたのだった。香織の抵抗により、母子は無事だったが、その後、M教諭は行方不明になってしまう……。
登場人物
主な登場人物をまとめます。登場人物は仮名であったり、名前が登場しなかったりします。
名前 | 説明 | 解説 |
---|---|---|
佐藤香織 さとう・かおり |
主人公 | 美人であるために不幸な人生を送る M教諭に襲われてしまう |
夫 | 故人 | 香織の夫 火災で死亡する |
父 | 故人 | 香織の父 自動車事故で死亡する |
娘 | – | 香織の娘 自動車事故に巻き込まれ車いす生活となる |
息子 | – | 香織の息子 火災後に誕生 |
M教諭 | 加害者 | 香織の娘に勉強を教えていた中高年の男性 睡眠薬を使って暴行事件を起こす |
ネタバレ
香織が書いた手記ということになっていましたが、実は香織の娘が書いた手記でした。香織は文章が苦手というのが、書いた人物が違うことを示唆する内容になっていました。本の中では、香織の手記の後ろに、追記というかたちで娘の手記が記載されています。なお、娘の名前は亜希と書かれていますが、これは仮名という断わりが入っています。
香織の手記について、香織が子供の頃に受けたいじめなどの災難は本当のことでしたが、夫や父親の死、そしてM教諭の犯行については全て嘘でした。実は香織はK氏と共謀して保険金殺人を繰り返しており、その犠牲者が香織の夫と父親でした。
M教諭は保険金殺人を疑っていた人物の一人で、このことを確認するために、亜希にメモ書きを渡しました。しかし、このメモの存在が香織らに知られてしまったため、M教諭は殺害されてしまいました。香織の手記には、M教諭が香織と娘を襲ったように書かれており、警察も同じように考えていたようですが、これは香織とK氏による偽装工作でした。
香織とK氏の監視下にあった亜希は犯行を告発するため、無知なふりをして二人に自白させます。その自白をテープに録音し、出版される手記に秘密のメッセージを残して、テープを警察に届けようとします。秘密のメッセージを読む方法は、手記のうしろから、左ページ最終行の一文字目と、右ページ一行目の一文字目を拾って読むことです。この規則の通りに読んでいけば、香織とKを告発するような文章が浮かび上がります。
感想と考察
手記というのが、もう信用できないので、話半分で読んでいたりしました。推理小説の手記に騙された読者は、結構多いのではないかと思います。読み進めてみると、大半は嘘だったということなので、やっぱり手記は怖いです。しかしながら、探偵や語り手が聴いた容疑者の発言が実は嘘でしたーよりはフェアになるのかもしれないです。
メイントリックは監禁された人物が外部と連絡をとる方法にあり、縦読みの変形が使われていました。連絡手段とは!?をそれほど認識するようなストーリーではなく、何が謎めいていたのかというと、何だったかなという感じなので、トリックだということを意識させるために、伝説級トリックというような宣伝文句が使われたのかもしれません。そして、読者の感想に現れていた「正直長い」という感想は、ある程度ページ数がないとトリックで告発文が書けないからだと思ったりもしました。
みんなの感想
口コミを調べてみると、本当に凄い、読みやすい、どんでん返しなどのポジティブな感想が投稿されていましたが、一方で、正直長い、という意見もあるようです。
辛い楽しい読書
いじめなど不幸な人生が描かれているので、物語はなかなかつらいです。ただ、伝説級超絶トリックがあるので、とても楽しい読書となります。
前半は痛ましい不幸な話が続き、香織に感情移入して辛かった。けど、後半からのどんでん返しがすごくて面白かったし、読書を楽しめた。
美人過ぎる人の苦労とは?という興味で読み進めていましたが、幸せな一時が皆無で、ずっと辛いので、ちょっと疲れたりもしましたが…、最後は楽しい読書になりましたし、完成度にも感心しました。
Kindleになかったので紙の本で読了。読んでみてKindleにない理由がわかったし、紙で読むべき本だとも思った。楽しい読書体験をさせて頂きました。
伝説級トリック
本の帯に伝説級トリックと書かれています。裏表紙の内容紹介には伝説級超絶トリックとも書かれています。ちょっと盛りすぎ、もしくは、ハードル上げすぎ、という口コミが比較的多いですが、確かに凄かったとコメントしている方もいます。
帯の“ミステリー史上初の伝説級トリックを見破れますか?”はちょっと煽り過ぎですよね(笑)。
伝説級トリックと書かれると身構えてしまって……。確かに凄かったですし見破れなかったですが、残念ながらそれほど驚かなかったです。
伝説級トリックという帯につられて購入。確かに驚いた!帯は誇張とも言えずなかなかの衝撃だったと思う。
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