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数奇にして模型【あらすじ・ネタバレ解説】

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 数奇にして模型』はS&Mシリーズの9作目です。模型交換会の会場で女性の首なし死体が発見され、その近くには男性が気絶していました…。

項目 説明
タイトル 封印再度
著者 森博嗣
出版社 講談社
シリーズ S&M
順番 9
発行日 1998/7/3
Audible版 あり
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あらすじ

多彩にして純粋な森ミステリィの冴え
「密室」の中には「死体」も「容疑者」も入っていた。孤独な模型マニアに降りかかった人生最大級の危機!

那古野市内で開催された模型交換会で、モデルの首無し死体が発見された。死体と共に密室の中で昏倒していたのは、大学院生、寺林高司。彼には同じ頃に起きた女子大学院生の絞殺事件の容疑もかけられていた。もう1つの事件も、死体が見つかったのは「密室」の中。犀川創平、西之園萌絵の師弟が事件の謎に挑む!
講談社BOOK倶楽部

事件概要

模型交換会…というとよくわからないですが、東京ゲームショーとかコミケみたいなイメージでしょうか。大きな会場を貸し切って行われるプラモデルとかフィギュアとかのイベントです。このイベントのコンパニオン・筒見明日香が殺され、死体が会場の一室で発見されます。その死体は首なしでした。

首なし死体のすぐそばで気絶していたのは、寺林という社会人大学院生です。寺林はフィギュアマニアでイベントの参加者でした。この寺林が所属する大学の女子大学院生・上倉裕子の死体も発見されます。死体のそばで寝ていた寺林の同僚がちょうど同じタイミングで殺されたというわけで、寺林が容疑者になります。その後、明日香の兄・筒見紀世都(きよと)も死亡します。

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ネタバレ

真相はなかなか複雑です。まず、明日香を殺したのは上倉です。上倉は寺林に好意を抱いていましたが、寺林と明日香の関係を邪推し、犯行に至っています(寺林と明日香は男女関係ではなく、そもそもお互い興味がなかった様子)。

上倉は明日香を殺したあと、現場すなわち模型交換会の会場に現れた寺林も殴っています。殴られて気絶した寺林は意識を取り戻したあと、報復のために大学で上倉の首を絞めて殺害。自宅や会場などを行き来して、明日香の首を持ち去り、首なし死体の横で眠りにつきました。

寺林が首を持ち去ったのは、型をとる練習のためです。型をつくる材料は高価なため、練習が必要でした。寺林は明日香に異常な興味を持っているように思えましたが、本当のねらいは兄の紀世都でした。寺林は紀世都を感電死させて、身体の型をとっています。

トリック解説

カッとなってやった程度の殺人に第三者が参加し、いろいろとかき乱しています。この第三者が変質者っぽい人だったので、通常想定しうる人の行動を逸した事件になっています。

首なし死体がみつかった部屋は密室といわれていましたが、室内には生きた人間が寝ていました。この人物が当初は被害者だと考えられていたりもしますが、実際は加害者でした。大学の事件も密室でしたが、これは単純に鍵を持っている人物が犯人でした。

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感想

 『数奇にして模型』は森博嗣のS&Mシリーズの9作目です。模型の展示会というマニアックなイベントが登場します。人で型をとりたい!なんて思うことは一般人にはなさそうですが、人で実験してみたいと思うことはあるのかもしれません。

数奇にして…では金子君が活躍します(萌絵を助ける)。この金子君は結構重要な人物だったりします。大御坊のキャラとか、犀川先生が萌絵を助ける場面とか、いろいろと見どころがありました。

哲学的な思考や深いテーマも魅力の一つかもしれません。「1と0」についての考察や、異常と正常の境界についての議論など、頭がよくなりそうな(基本、気のせい)要素が多く含まれています。犯人の異常な行動やサイコパス的な描写も、理系っぽい人ならではの異常な感じが出ていました。理系ミステリィとしてはもちろん、哲学的な内容にも富んだ一冊という感じで、推理小説としては事件を爆発させてわけわかなくしたという印象です。

いよいよ次作がシリーズの最終巻ですので、ちょっと寂しい感じもしますが、S&Mまだまだ始まりですので、次作『有限と微小のパン』を読み終えたら、Vシリーズや四季シリーズ、Gシリーズ……などなどが待っています。

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