『冷たい密室と博士たち』は『すべてがFになる』の続編で、S&Mシリーズの二つ目のエピソードです。漫画化やドラマ化もされています。この記事では、あらすじ、みんなの感想、作品について考察などをまとめています。
項目 | 説明 |
---|---|
タイトル | 冷たい密室と博士たち |
著者 | 森博嗣 |
出版社 | 講談社 |
シリーズ | S&M |
順番 | 2 |
発行日 | 1996/7/1 |
Audible版 | あり |
あらすじ
犀川は同級生でN大学土木工学科の助教授・喜多北斗に誘われ、西之園萌絵と一緒に極地環境研究センター・通称極地研(きょくちけん)を訪れる。極地研は氷点下20度という極低温環境を再現可能な実験設備を備えていた。犀川たちが訪れた日の夜、実験室の中から男女の死体が発見される…。実験室は衆人環視かつ密室状態の冷たい実験室の中で、男女2人の院生が刺殺体となって発見される。殺害された2人と犯人はどのようにして実験室に入ったのか…。
事件概要
実験が終了した後に、実験室の一室から院生二人の死体が発見されます。実験室はずっと実験中で、犀川や萌絵を含む数人が実験を見学していました。さらに、死体が発見された準備室は鍵がかけられており、完全な密室状態した。実験室は-20℃のため、実験室に入る人物は防護服を着ています。つまり、顔がわかりません。
ネタバレ
犯人は木熊恭介教授と市ノ瀬里佳です。この二人は実は親子でした。被害者の一人である丹羽健二郎は市ノ瀬に暴行を働いた過去がありました。これが、木熊と市ノ瀬の動機です。丹羽の婚約者である服部珠子も殺されたのは、暴行の事実を丹羽が服部に話したためです。白骨となって見つかった増田潤という学生を殺したのも、市ノ瀬です。増田は丹羽から暴行の事実を聞かされていました。市ノ瀬の父親である木熊はすべての罪を被るため、自殺します。
shikaの意味
shikaというアカウントを使っていたのは市ノ瀬里佳です。リカはドイツ語で鹿という意味があるためです。ただ、グーグル翻訳機で鹿をドイツ語に変換してもRickeにはなりません。辞書で調べると、Rickeはノロジカの雌という意味のようです*2。
*2鹿という意味で一般的に使われる単語ではないかもしれません
個人の感想
極地研はかなり特殊な舞台だと思いますが、それでもやはり、孤島の研究所に比べると地味なのかもしれません。動機も復讐というわかりやすい内容で、密室も入れ替わりトリックでした。これは、1作目が伏線として使い、あえて、理系ミステリではない結末になっているのかもしれません。この作品が処女作と言われているので、発行順を決めたと思われる出版社の意図だと思われます。
カルピスとコーラ
カルピスをコーラで割ったキューピットというカクテルが登場します。この作品を読んで、早速ためしたわけですが、美味しいとも、まずいとも言えない飲み物でした。濃厚な飲みごたえとでもいいましょうか、他にはない、口当たりです。味はとにかく甘いです。
考察
顔が見えなくて誰かわからないと聞くと、金田一耕助「犬神家の一族」を思い出します。この作品は防護服ですが、犬神家はゴムマスクで、みるからに怪しいです。顔を隠しているという状況になると、入れ替わりを想像してしまいます。鹿とリカについては、前述の通り、リカは鹿を意味する一般的な言葉ではないかもしれません。とはいえ、ただのアカウント名なので、市ノ瀬がそれを気に入って使っていただけだと考えれば、正しいかどうかは特に問題ではないように思います。
みんなの感想
口コミを調べてみると『面白い』や『喜多先生』、『推理』という言葉がよく書き込まれていました。
面白い
面白いというコメントがやはり多いです。前作にあたる「すべてがFになる」を気に入ってこの作品を手にとった方が多いはずなので、評価が高いのかもしれません。確かに面白いと思いますが、すべFほどのインパクトはないという感想も多いです。四季博士が登場しないというのがその要因かもしれません。
特殊な環境だった前作に比べるとインパクトはない。前作の方が非日常的で好きだったかな。でも、理系トリックはやっぱり面白い。「解析されていく」と言う表現がピッタリ。
あまりに衝撃的だった『すべてがFになる』と比べるとずいぶんと一般的なミステリィらしい気がするけれど、それだけ真賀田四季という人物が抜きん出た存在だったということで、本作も十二分に面白いのでした。
Fになるはアニメで視聴済みだったのでシリーズ二作目から読み始めたけど、いやぁー面白い。最初は文体に戸惑ったものの、慣れてくれば理知的な雰囲気が心地いい。展開は丁寧な本格ミステリーながら、二転三転する起伏もありエンタメとして素直に楽しめた。
スラスラ読めた。犀川と西之園の個性も更に強まって増々面白くなってきました。面白い。次読みたい!
喜多先生
全体の3%くらいが喜多先生に言及しています。犀川先生はおよそ35%なので、犀川先生について触れている方の方が圧倒的に多いですが、喜多先生ファンもいるようです。喜多先生が犯人ではないか、と予想していた方もいます。今後の作品にも登場するため、準レギュラー的な登場人物です。
喜多先生が好き。喜多先生、かっこいいわ。(言いたいだけ)
喜多先生好き。喜多先生がいるときの犀川先生が好き。男の友情みたいなのがいいよね。
喜多先生がカッコイイ。けど、ちょっと疑っちゃいました(;o;)ごめんなさい(笑)
推理
推理が楽しめるという感想も多いです。犀川、萌絵、今回は喜多先生も加わり、それぞれが事件について推理します。今回は理系色がほとんどないとも言えるようなトリックなので、純粋な推理小説として楽しんだ方が多いのかもしれません。
孤舞台設定に無理がなく話も自然。犀川の推理を安心して楽しむことができた。
探偵役が手掛かりを全て拾い、懇切丁寧な謎解きで読書を真実に導く、みたいな世に溢れたミステリではなく、読み手自身が推理のための数式を立て、解答を得るように促す。その上で読者のリアリティに対する認識や思い込みに虚を衝くような形でとっておきのトリックを出現させる(前作「すべてがFになる」ではこれが如実に表れてます)。「なるほど、自分はこう思い込んでたから解にたどり着けなかったんだな。」と思わせてくれる、まるで大学の興味深い講義を聞いている時のような気持ちになれます。
「すべてがFになる」より先に書き上げた作品という事らしい。素直に謎解きを楽しめる本格的な推理小説だ。
シリーズ前作の「すべてがFになる」より良かったかも。奇抜さでは劣るけど推理を楽しむという意味で。
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