ガリレオ2・ドラマ第7話『偽装う(よそおう)』のあらすじ、真相、トリック解説、考察感想です。第七話では烏天狗のミイラを祀る神社の神主が亡くなった事件をきっかけに、湯川が近所に住む家族の殺人事件に巻き込まれます。
あらすじ
湯川と栗林は湯川研の学生に誘われ、学会の帰り道に烏天狗のミイラを祀る神社を訪れる。しかし、ミイラを納める神社の祠は、3週間も前にコンクリートで固められていた。祠を塞いだのは神主本人で、その理由は烏天狗に狙われている、という奇怪な内容だった。その後、神主の白骨化した死体が見つかる。死体が見つかったのは湯川達の訪問の2週間前であり、警察は病死と判断していた。しかし、神主の発言や、ミイラを包んでいた布が発見されたことなどから、地元の警察官は烏天狗による殺人とミイラの盗難を疑っていた。湯川と栗林が祠の内部を調べ始めた頃、地元の夫婦が自宅で死体となって発見される。殺害現場の壁には「烏天狗」という文字が書かれていた…。
事件概要
湯川研の学生である遠野みさきは、地元の警察官の合田武彦と、死んだ夫婦の娘である小島結衣と幼馴染です。夫婦の死体を発見したのは娘の結衣で、このとき、遠野も一緒でしたが、家からやや離れたところに駐車した車の中で、待っていました。夫の太一は散弾銃で胸のあたりを撃ち抜かれて、ロッキングチェアの上で息絶えていました。一方、妻の啓子は首を絞められていました。首に太一の血痕が付着していたことから、犯人は太一を殺害後、啓子の首を絞めたと推測されます。夫婦の自宅は窓に鍵がかけられており、玄関も施錠されていたため密室でした。しかし、凶器の散弾銃は庭に捨てられていました。犯人がどうやって家から逃亡したのか、という疑問に対して、烏天狗が壁をすり抜けたと、警察官が主張します。
ネタバレ
結衣の父親である太一は自殺です。ロッキングチェアに座り、散弾銃の引き金を足の指で引いて、銃を発砲しました。母親の啓子は太一に首を絞められて殺されました。結衣は、母親と口論になった太一が激昂し、殺したと考え、母親の方が後に殺されたようにみせようとします。実は太一と結衣に血のつながりはなく、養子縁組もされていなかったため、法律上、ふたりは他人でした。そのため、母が死んだ後に父が死ぬと、遺産は結衣のものになりません。もしも、太一が先に死に、その遺産が配偶者である啓子のものになれば、啓子の実子である結衣に太一の遺産が譲られることになります。二人の死体を発見した時、結衣は遺産のために、第三者の犯人を捏造しました。その具体的な手段が、啓子の首につけた血痕、庭に捨てた散弾銃、壁の烏天狗などです。
ミイラの盗難と神主の死については真相が明確には描かれていません。しかし、湯川の調査によって、ミイラは偽物だった事と祠にミイラが存在しない事が明らかになっています。そして、神主は生前、ミイラが偽物であることを知る人物が存在し、その人物と揉めているということをほのめかすような発言をしています。また、神社に住み着いていた金髪の男も登場します*1。これを総合すると、神主は偽物のミイラに気付いた金髪の男と揉めており、別の人間にミイラが偽物であることが発覚するのを恐れ、祠を埋めてミイラの存在を隠蔽したが、もともと心臓が弱かったので、心労のため病死した、というストーリーが想像されます。
*1:確かなのはここまでの情報です。以降の内容は想像です
トリック
自殺を他殺にみせるという偽装工作で、その理由は遺産でした。他殺の場合は犯人らしき人物を用意する必要がありますが、このエピソードで偽装工作を仕掛けた人物が犯人にしたて上げたのは、烏天狗でした。現場を密室にしたことにより、犯人の逃走経路が不明になり、壁を通り抜けることができるという特徴を有する烏天狗の名が挙がります。壁をすり抜けるという科学的な方法を予感させながらも、密室という状況から第一発見者が最も怪しくみえるのも事実です。しかし、この第一発見者は殺人者ではなく、死体や血痕に触れたり、証拠を動かしたりした人物でした。
ロッキングチェア
湯川は、太一がロッキングチェアに座ったままだったことから、自殺を見抜きました。ロッキングチェアに座ったまま散弾銃で撃たれた場合、撃たれた衝撃で、椅子は後方へ揺れるはずです。後ろに揺れた後は元の位置に戻ろうとします。この時、椅子に座った人物は、椅子から転げ落ちるはずです。しかし、自分で銃を持っていれば、銃発砲の反動が自分に加わるため、弾によって体が押される力は相殺されます。相殺の結果、ロッキングチェアは揺れず、死体は座ったままになります。
濡れねずみ
湯川が結衣の気付いたのは、結衣と祠であった時、彼女が濡れていたためです。祠で対面する前、湯川は結衣から傘を借りています。この時、結衣は自分用の傘を持っていました。その後、湯川は結衣の傘が濡れているのを見かけます。傘を持っていて、それを使ったはずなのに、体は濡れていたということから湯川は、傘を差すのを忘れるほど動転し外に出た、と推理します。
考察
土砂崩れで警察が到着せず、クローズド・サークルとなっていたことが、偽装工作の一助となっています。湯川先生の指摘の通り、首の血痕と絞殺の痕跡が一致しないというのは、警察がすぐに気付くかもしれないので、クローズド・サークルでなければ、偽装工作はすぐに発覚したかもしれません*1。
*1:クローズド・サークルでも、ガリレオ先生がいたので、結局、偽装工作はすぐに発覚しています
銃の衝撃
銃で撃たれたら、そもそも吹き飛ぶのか、というのは疑問ではあります。戦時中の資料映像などで、撃たれた人を見ると、その場に崩れ落ちる場合が多いような気もします。しかしながら、このエピソードで使われたのは散弾銃なので、弾はやや大きめの筒のような形状です。かなりの至近距離で発砲したならば、この筒に押されて、体が後ろに移動するかもしれません。ただ、基本的に弾は小さく、貫通してしまうので、人を吹き飛ばすことはないように思います。
ミイラの謎
夫婦の死に直接関係のなかった烏天狗のミイラですが、その行方は不明のままです。怪しい金髪の男も、会話の中で登場しますが、彼も行方不明です。もし金髪の男が偽物のミイラに気付いていて、それをネタに神主を強請るため、証拠としてミイラを盗んだのであれば、ミイラは金髪の男が持っているはずです。強請りの結果、神主は倒れ亡くなってしまいます。それに気付いた男が、神主の死への関与を糾弾されることを恐れ逃亡した、かもしれません。
感想
結衣が犯人でしかありえない、と思っていたら自殺でした。自殺を自殺した本人以外が他殺に偽装するエピソードは他にもあったりするわけで、最近そんな作品を視聴したのですが、それでも、気付きませんでした。ポンコツですね。さすがに烏天狗の仕業ではないことはわかりました。
くりちゃんの講義
いつもは女子であふれている湯川先生の講義を栗林助手が代理を務めることになり、めでたく、男の子三人が出席しました。物理学の講義にイケイケな女子ばかりというよりは、むしろ、あんな感じの男子だらけ、というのが現実だと思います(偏見です)。
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