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世界でいちばん透きとおった物語【あらすじ・トリック・ネタバレ解説】

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世界でいちばん透きとおった物語』は杉井光(すぎい・ひかる)氏の推理小説です。この記事では、あらすじ、登場人物、仕掛けられたトリック、「     」に入る言葉、読者の感想、巻末にある献辞に登場するA先生についてなどをまとめています。紙の本でしか体験できない感動、電子書籍化不可能などのキャッチコピーで話題となった小説です。2025年1月末には『世界でいちばん透きとおった物語2』が発売されます!

項目 説明
タイトル 世界でいちばん透きとおった物語
評価
著者 杉井光
出版社 新潮文庫
シリーズ 単発
発行日 2023年4月26日
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あらすじ

宮内彰吾が、癌に侵され、闘病ののち、61歳でこの世を去った。彼は著名なミステリ作家だった。生前、女性に対して奔放だった宮内は既婚者でありながら愛人との間に子供を授かっていた。それが、僕である。異母兄弟から連絡があり、遺作を出版したいのだが原稿がないという。タイトルは「世界でいちばん透きとおった物語」らしい。宮内とは会ったこともない僕だが、文芸編集者の霧子さんとともに、遺稿を探すことになる――。

キャッチコピーは「絶対に予測不能な衝撃のラスト――」です。大御所作家の愛人の子が主人公で、名前は藤阪燈真です。この燈真が、編集者の深町霧子と共に、一度も会ったことがない父親の遺作「世界でいちばん透きとおった物語」を探すことになります。その後は、燈真の父である宮内彰吾の愛人達に遺品を渡しながら話を聞き、ミステリーらしく物語が展開していきます。

登場人物

主人公は藤坂燈真という男で書店でアルバイトをしています。その他の主な登場人物は以下の通りです。

名前 説明
藤坂燈真
ふじさか・とうま
主人公。母と二人暮らしだった
藤坂恵美
ふじさか・めぐみ
燈真の母親。宮内彰吾と不倫していた
交通事故で亡くなっている
宮内彰吾
みやうち・しょうご
燈真の父親。大御所のミステリ作家
本名は松方朋泰(まつかた・ともやす)
深町霧子
ふかまち・きりこ
探偵役。編集者
ミステリファン
松方朋晃
まつかた・ともあき
宮内の本妻の息子
金目当てで遺稿の出版を計画
藍子
あいこ
宮内の愛人
キャバ嬢で藍子は源氏名
七尾坂瑞希
ななおざか・みずき
宮内の愛人
作家
郁嶋琴美
いくしま・ことみ
宮内の愛人
俳優
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感想

杉井光さんの新作です。読み終えて、著者の杉井さんと編集の方の想像を絶するような労力に敬意を表したくなりました。主人公は不倫で生まれた婚外子で、母は死に、会ったことのない父親(ミステリ作家)も亡くなります。重たい境遇ですが、読んでいて胸が苦しくなるような展開は、あまりなかったように思います。ミステリーらしく事情聴取しながら物語は進んでいき、中盤以降で仕掛けられた謎が明かされるわけですが、ほんとうに、震えます。そして、何度もページをめくり直したりしました(笑)。

いろいろとヒントが隠されている作品ですので、ネタバレはもちろんですが、事前情報も遮断して、読んでいただきたい作品です。以下では、まず、ヒントになりそうな内容をご紹介したいと思います。

読んだ方は、おそらく、読み返す(見返す)ことになると思います。似た作品もあるにはあるのですが、おそらく、経験したことがない驚きを得られると思います。物語の中では、主人公である藤阪燈真の母親が校正者であること、燈真は電子書籍しか読めないことなどがヒントになっています。また、物語とは直接関係のないヒントとして、ひらがなが多い、電子書籍がない、本の帯、タイトルなどが挙げられます。

みんなの感想

本の口コミをしらべてみうとネガティブな感想はほとんど書き込まれていませんでした。面白い仕掛け、声出る、鳥肌立つ、理由納得などなど、称賛の声が多い印象です。

  • 衝撃のラスト
    本の帯などで『衝撃のラスト』と謳われており、間違いなく鳥肌ものの衝撃のラストです!ネタバレ厳禁で唯一無二の読書体験を味わえます!うっかりネタバレをみてしまう前に読むことをオススメします
  • 仕掛けがすごい!
    紙書籍でしかできない仕掛けにワクワクしますね!
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A先生とは?

献辞にA先生という人物が登場します。この人物は泡坂妻夫(あわさか・つまお)氏です。著書が東西ミステリーベスト100に4作品もランクインしている推理作家ですが、2009年に他界されています。

 僕の生涯で最も激しい驚愕を伴う読書体験を与えてくれた、A先生に捧げる。同じ新潮文庫から刊行できたことを喜びたい。本来なら巻頭に記すべき献辞を巻末に置き、あまつさえ名を頭文字で伏せるという非礼の理由も、物語の神秘を愛する読者諸氏であれば理解していただけることと思う。

著作

紙の本でないと……というトリックが使われた泡坂妻夫氏の著作として、「しあわせの書」や「生者と死者」という推理小説があります。なお、紙の本ならではのトリックがあるというのは、本の紹介文に書かれている内容なので、ネタバレではありません。

以下の2作品は新潮社から出版されていますので、「世界でいちばん…」の著者である杉井光氏に“驚愕を伴う読書体験”を与えた本だと考えられます。

しあわせの書

 宗教団体・惟霊(いれい)講会で二代目教祖の継承問題が勃発。同じ頃、ヨギガンジーは惟霊講会の失踪した信者を追っていた。布教のための小冊子「しあわせの書」とは!?

生者と死者

 消える短編小説。そのまま読むと短編小説だけど、袋とじを開いて読むと…。読み方注意!はじめは必ず袋とじのまま読んでください!!

ネタバレ注意

主人公の藤坂燈真は宮内の関係者から話を聞き、「世界でいちばん透きとおった物語」というタイトルの遺稿が存在することに気付きます。しかし、この原稿は何者か(おそらく宮内の元妻)によって燃やされてしまいます。原稿は焼失してしまいましたが、宮内の意思を受け継いだ燈真が作品の再現を試み、最終的に書き上げます。

燈真は「世界でいちばん透きとおった物語」を“すべての見開きの文章レイアウトがまったく同じ左右対称形”で書かれています。右ページはすべて同じ位置で改行されており、左ページも同じです。こうすることで、後ろ文字が透けなくなり、コントラスト過敏の燈真でも読める本になっていました。

燈真は次のページが透けてしまうため、紙の本が読めない体質でした。そのため、主人公は推理小説を読んでいる途中に犯人がわかってしまいます。しかし、この仕掛けがあれば、紙の本であっても先を知ることはありません。つまり、死んだ宮内は主人公のために、遺稿となった小説を書いたということになります。

トリック

左右対称のレイアウトは、読者が手にしている本にも仕掛けられています。そのため、後ろのページが透けて見えないようになっています。電子化すると文字サイズなどの設定等によってレイアウトが崩れてしまう場合があります。そもそも、電子書籍には、透過という仕様がないため、電子書籍では実現しにくいトリックです。

「     」

ラストに登場する「     」は、透かすと「ありがとう」が浮かび上がるようになっています。これは燈真が父親である宮内に贈った言葉です。

続編について

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