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ヨモツイクサ【あらすじ・ネタバレ解説・正体・感想】

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 「ヨモツイクサ」は知念実希人(ちねん・みきと)氏のミステリー要素のあるバイオホラー小説です。この記事では、あらすじと真相、感想などを紹介しています。

項目 説明
タイトル ヨモツイクサ
評価
著者 知念実希人
出版社 双葉社
シリーズ
発行日 2023年5月
Audible版 あり
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あらすじ

 北海道の“ヨモツイクサ”と呼ばれる森で、リゾート施設の建設作業を行っていた6人の作業員が行方不明になる。刑事の小此木劉生(おこのぎ・りゅうせい)は、一家失踪事件との関係をにらみ外科医の佐原茜(さはら・あかね)に作業員の事件を伝える。佐原の両親や姉は7年前に同じ地域で発生した“美瑛町一家神隠し事件”で失踪しており、茜の姉である椿は小此木の婚約者だった。

 作業員失踪について警察はアサヒと呼ばれる熊の仕業と判断し、猟友会と刑事の小此木らを森に派遣。直後に作業員の遺体を発見することになる。家族の失踪事件に関係があるかもしれないと考える茜は、友人の四之宮学(しのみや・まなぶ)を頼って遺体の司法解剖に立ち会う。解剖によって熊に襲われただけではないということが判明する中、遺体から不気味に光るとても小さな虫が発見される。足が八本あることなどから四之宮はその虫をイメルヨミグモと名付けるのだった。

 森に家族失踪の手掛かりがあると確信した茜は鍛冶誠司(かじ・せいじ)と共に森へと向かう。そこで二人はアサヒの死体を発見し、さらに謎の少女とも遭遇することになる。

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ネタバレ

森の中で茜と鍛冶が遭遇したのは小室紗枝(こむろ・さえ)で、紗枝は茜が助手として手術した患者でもありました。紗枝は森から病院へと連れて来られ手術を受けますが、手術中に紗枝に寄生した全長1mほどの蜘蛛が孵化します。化け物に襲われる茜ですが、解剖刀で応戦し、蜘蛛を始末します。以降この蜘蛛はヨモツイクサの幼生と呼ばれることになります。

幼生を調査した四之宮はヨモツイクサに生殖機能がなかったことから、アリやハチのように、女王のような立場の生物が存在すると考えます。そしてこの女王をイザナミと名付けます。イザナミはいわば女王蟻で、ヨモツイクサは兵隊蟻でした。この時点で、イメルヨミグモはヨモツイクサと似たようなDNAをもつ生物で、イザナミの産卵を促すような存在と推測されます。

イザナミ自身が紗枝に卵を植え付けたかというとそうではなく、媒介者がいるようでした。その媒介者を四之宮はベクターと名付けます。ベクターは人間で、四之宮はその正体に気付きますが、何者かによって殺されてしまいます。

その後、茜達は化け物退治のため、再び森へと向かいます。そこで、ヨモツイクサだけではなく、ヨモツイクサと敵対するアンミタンネなる生き物とも遭遇します。それでも、最終的に茜はイザナミをダイナマイトで始末します。

ベクターの正体

イザナミ退治の途中で小此木がベクターということになりますが、本当のベクターは主人公の佐原茜でした。四之宮はこのことに気付き、殺される前に電話でメッセージを残しています。そして茜はこのメッセージを物語の終盤に聞くことになります。四之宮を殺したのは茜です。しかし、茜はトランス状態になるため、何も憶えていません。なお、茜の正体が判明するときに、『君だよ』とだけ印刷された1ページが登場し、これが衝撃のページとなります。

物語中盤では、ベクターは卵の単なる運び屋と考えられてました。佐原茜は確かに卵を患者に植え付けていたわけですが、その卵を産んだのも、実は茜自身でした。イザナミは二体存在していて、一体が序文に登場したハルで、もう一体が茜でした。

ヨモツイクサの正体

ヨモツイクサ、イザナミ、イメルヨミグモ、アンミタンネなどなど、いろいろな化け物が登場します。それぞれについてまとめます。

  • イザナミ
    茜が最後に戦ったのは序文に登場したハルが変わり果てた姿。例えるならば、女王蟻のような存在だが、交尾はしない。ハルはもともと人間なので、ヒトの卵子をもっているが、これがイメルヨミグモによって「古いヨモツイクサ」の卵になる。ハルを退治した茜は、晴れてイザナミを襲名することになる
  • アンミタンネ
    古いヨモツイクサ。アンミタンネと名付けられる。兵隊蟻のような存在で、いわば、ハルの子供
  • ヨモツイクサ
    アンミタンネと比較して、新しいヨモツイクサと呼ばれる。アンミタンネよりも強く進化している。実は佐原茜の子供
  • イメルヨミグモ
    生き物に寄生して卵子をヨモツイクサ(=アンミタンネ)の卵に変える。ヨモツイクサの精子のような存在で、遺伝子の書き換えができる。アンミタンネのイメルヨミグモと、ヨモツイクサのイメルヨミグモが存在するが、それを区別するような名称はない

茜がハルと血みどろの戦いを繰り広げたのは、進化のためです。これは戦って勝ち残った方が強いという単純な理屈に支えられています。今回の闘争に関しては茜の方が強かったので、次世代のイザナミ=女王として今度は茜が君臨することになります。なお、茜は自分よりも下の世代を育てるために、後輩の姫野由佳(ひめの・ゆか)を生贄にしています。最後、姫野はイメルヨミグモに取りつかれたようなので、茜のような存在になると考えられます。

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感想

私はハンニバルなどが好きなので、グロいのは割と大丈夫でした。生々しい描写によって、自分の体の一部もぞわぞわしたりしましたが、そういうのが面白いと感じる方もいるのではないかと思います。ハンニバルとは違い化け物が登場しますので、ぐっちゃぐっちゃになっていても、人間の仕業ではないということで、精神衛生的に落ち着ける気がします。

考察

ミステリーとしては、主人公(語り手)が犯人という仕掛けでした。主人公は変なクモに操られていたため、自分が黒幕だという描写はあえて描く必要もありませんでした。また、主人公の超人的な肉体、暗いはずの牛舎が明るいなどなど、さまざまな伏線が張られており、唐突な真相にはなっていません。

みんなの感想

 読者のレビューを調べてみると、衝撃のラスト、戦慄のラストなど、物語の最後に言及している方が多いです。グロテスクや気持ち悪いという感想がよく書き込まれており、確かにその通りの内容となっています。

個人的には「十角館の殺人」級の衝撃でした。まさに衝撃の1ページ!という感じだった。

ラストが衝撃だった!けど…そこに辿り着くまでが終始グロくて…。私の好みの内容じゃなかったので、読み進めるのに時間がかかってしまった。

伏線がかなり丁寧かつ親切でしたので、ある程度は予測できたりもしましたが、それでも、例のページには衝撃を受けた。

怖い、気持ち悪い、アカデミック、そして最後はどんでん返し、すごい!

医学とか生物学の知識を盛り込んだバイオホラーなので、本格ミステリだと思って読むと、ちょっと違うかも。

コメント

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