『ファラオの密室』は白川尚史(しらかわ・なおふみ)さんの推理小説で、第22回(2023年発表)『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した作品です!この記事ではあらすじやちょっとネタバレありの感想などを紹介しています。
項目 | 説明 |
---|---|
タイトル | ファラオの密室 |
評価 | |
著者 | 白川尚史 |
出版社 | 宝島社 |
シリーズ | – |
発行日 | 2024年1月 |
Audible版 | 未発売 |
あらすじ
紀元前1300年代後半、古代エジプト……死んでミイラにされた神官のセティは、心臓に欠けがあるため冥界の審判を受けることができなかった。欠けた心臓を取り戻すために地上に舞い戻ったが、期限は3日。ミイラのセティは、自分が死んだ事件の捜査を進めるなかで、やがてもうひとつの大きな謎に直面する。棺に納められた先王のミイラが、密室状態であるピラミッドの玄室から消失し、外の大神殿で発見されたというのだ。この出来事は、唯一神アテン以外の信仰を禁じた先王が葬儀を否定したことを物語るのか?先王の葬儀の失敗はエジプトの危機に繋がる。タイムリミットが刻々と迫るなか、セティはエジプトを救うため、ミイラ消失事件の真相に挑む!
宝島社 公式HP
セティという神官が探偵役です。セティはミイラで、心臓が欠けているらしい…。神秘的な意味のほうの『ミステリー』かと思いきや、密室とかかが登場する推理小説です(タイトルにも密室と入っていますし)。もちろん古代エジプトなファンタジー要素もあります。
こういった作品はミステリ界隈で特殊設定ミステリーと呼ばれています。超能力とか霊能力とか、そういった超自然的な力が登場するミステリーのことです。たとえば、セティのように死人が蘇ったら、殺人ってそもそも意味がないわけで、犯罪に伴う犯人性の謎みたいなものが消えてなくなったりします。死者が蘇るという設定は荒唐無稽に思えるかもしれませんが、そういった世界観で再構成された従来の歴史ある推理小説がなかなか面白かったりします。
死者が甦る世界
大森望先生の書評に「死者が甦る世界」という言葉が登場します。このワードを耳にして思い出すのが、『生ける屍の死』です。口コミはあんまりよろしくないですが、このミスのキング・オブ・キングスで1位に輝いた作品だったりします。
感想
繰り返しになりますが、『ファラオの密室』は古代エジプトを舞台にしたミステリー×ファンタジーな作品。ミイラの神官セティが蘇るという斬新な設定で読みたくなります。読み進めていくと、死者の蘇生や神々の存在など、超常的な出来事が次々に起こり飽きないはずです。
古代エジプトなど、現代からかけ離れた舞台は知識がないと書けないと思います。そんなわけで、古代エジプトが舞台という設定だけになりがちですが、この本はエジプトの神々や宗教儀式、ピラミッド建設の過程などなど、細部にまでこだわって描写されています。紀元前の古代エジプトという背景はエキゾチックでまさにミステリーです。
ちょっとあらすじを詳しく書くと、主人公のセティはピラミッドの崩落事故で命を落とし、ミイラとして冥界へと送られます。しかし、心臓の欠片が失われていたために冥界の審判を受け入れられず、三日間だけ現世に戻されます。この限られた時間の中で、セティは自らの死の真相と心臓の欠片を探らないといけません。そんな中、セティは外国人奴隷の少女カリとともに様々な陰謀に巻き込まれていきます。セティとカリの関係性も見どころの一つかもしれんです。
物語の最後には、衝撃的な展開なんかが用意されています(なんとなく予想できてしまった方も多いらしい)。古代エジプトを舞台にしたファンタジー小説という感じで、ミステリーは控えめかもしれません。
みんなの感想
表紙(ネタバレ注意)
読み終えたあたりで思い浮かぶのが「表紙は誰?」という疑問です。主人公のセティは男性でした。表紙の人物は美人な女性にみえるんですが、女性っぽい男性で、この人がセティなんでしょうか。表紙を飾るといったらやっぱり主人公!という思い込みを利用したトリックなのかもしれんです。ちなみに表紙を描いたイラストレーターはwatabokuさんという方です。
コメント