「アリアドネの声」は井上真偽(いのうえ・まぎ)氏のミステリー小説で、ジオフロント、災害、ドローンなどが登場します。この記事では、物語のあらすじと結末、感想などを紹介しています。
項目 | 説明 |
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タイトル | アリアドネの声 |
評価 | |
著者 | 井上真偽 |
出版社 | 幻冬舎 |
シリーズ | – |
発行日 | 2023年6月 |
Audible版 | あり |
あらすじ
地下都市WANOKUNIのオープニングセレモニーで巨大地震が発生し、最下層の地下五階に女性が取り残されてしまう。その女性は中川博美(なかがわ・ひろみ)という障害者で、盲目であり、ろう者であり、さらに発話もままならなかった。
主人公の高木春生(たかぎ・はるお)は災害救助用ドローン・通称アリアドネのパイロットとして、救助任務にあたることになる。不測の事態によってドローンの故障などに見舞われつつも、中川を地下三階にあるシェルターへと誘導していくが、途中で“中川の障害はすべて嘘ではないか”という疑惑が浮かび上がることになる。
高木が救助任務に専念している頃、セレモニーに来ていた韮沢粟緒(にらさわ・あお)の妹・碧(みどり)が行方不明になってしまう。捜索のため、韮沢は同級生だった高木に妹の救出も依頼する…。
ネタバレ
中川博美の障害が嘘かどうかという疑問は以下の出来事によって浮上します。
- 盲目の中川が照明のスイッチを入れた
- 盲目の中川が暴走するフォークリフトを避けた。このとき、耳が聞こえるような素振りもみせた
- 暴露系ユーチューバーが中川の嘘を主張
実際、中川の障害は本物でした。怪しげな行動が続いていたのは、非難途中に中川が韮沢粟緒の妹である韮澤碧と遭遇し、その後、碧を背負っていたからです。
中川は碧が怖がったために照明を点けていました。そして、碧が一緒だったので、フォークリフトも避けることができました。なお、暴露系ユーチューバーは動画のネタのために、適当なことを言っていたと考えられます。
主人公達は中川と行動を共にする韮澤碧をバックパックだと勘違いしていました。碧は失声症だったため、声を出せず、存在を伝えることができませんでしたし、中川と碧が遭遇した時点で、ドローンのカメラは壊れていました。
感想
巨大地震に見舞われた地下都市で救助のためにドローンを利用するというのが、新鮮な設定だったと思います。救助者も地下都市に入っていてハプニングを乗り越えていくというのは、ありそうな感じですが、こちらの方がハラハラ感は増しそうです。
しかしながら、この作品もだいぶハラハラドキドキする展開だったと思います。登場するのはドローンなので、傍観者という視点が強くなりそうですが、そんなことはありませんでした。むしろ、ドローンという少し異なった視点だからこその仕掛けがあったように思います。
この作品について、担当編集者の方は“書籍自体をゲーム的な作りにしてもらった”と語っておられます。確かに、マップや状況の挿入が各所にあり、ゲーム感が増していたと思います。災害ゲームといえば「絶体絶命都市」ですが、このゲームと比較すると、トリックという点ではやはり書籍の方が楽しめるような気がします。
考察
探偵対犯人という感じのミステリーではありませんでした。推理対決、謎解きという要素はほとんどなく、ハプニングによって結末に至っている印象です。だから面白くないというわけではなく、とても面白い作品ですが、本格的な推理小説とはジャンルが異なります。
みんなの感想
読者のレビューを調べてみると、どんでん返しについては賛否両論でした。
殺人事件は特に起きない。どんでん返しあるの?と思っていたら、最後の最後に見事などんでん返しがありました!
“想像の限界を超えるどんでん返し”という宣伝文句が帯にかかれていたが、個人的には、そこまえどんでん返しではない。面白くて読後感も気に入りましたが、どちらかといえばストレートな結末でした。
ミステリ小説だと思って読んでいたけど、パニックものといった感じで、ミステリ要素が登場しなかった。でも、最後にどんでん返しがあって、ミステリだと思えた。
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