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真相をお話しします|あらすじ・ネタバレ解説

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 「#真相をお話しします」は結城真一郎(ゆうき・しんいちろう)氏の短編推理小説集です。惨者面談、ヤリモク、パンドラ、三角奸計、#拡散希望の5つの短編が収録されています。この記事では、各短編のあらすじとネタバレ、短編集の感想・考察などをまとめています。

項目 説明
タイトル #真相をお話しします
評価
著者 結城真一郎
出版社 新潮社
シリーズ
発行日 2022年6月30日
Audible版 あり
文庫化
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惨者面談

東大生の片桐は家庭教師派遣会社で、営業のバイトをしていた。営業成績トップの彼は仕事のため、矢野家へと向かう。矢野家には矢野悠という私立の小学校に通う六年生の男の子がいて、母親は受験に真剣らしい。東大生という肩書をもつ片桐がちょっとすすめれば、簡単に入会に持ち込めるに違いない、と思ったのだが…。

登場人物
名前 説明
片桐 主人公。東大生
家庭教師の会社で営業のバイトをしている
矢野悠 小学6年生
矢野真理 悠の母親。片桐の会社に相談
矢野慎一 悠の父親。海外赴任中で不在

ネタバレ

矢野家に到着した片桐の目に、家の前に散乱したゴミが飛び込んでくる。悠くんのものらしい子供用の自転車には埃がかぶっている。家の呼び鈴を鳴らすと、留守ではなさそうなのに返事がない。片桐の都合で訪問したわけではないのに、20分も待たされて、やっと扉が開いた。

悠はユウと読むらしく、親子の反応を見る限り、それは間違いなさそうだった。しかしその後、母親と会話がかみ合わない、模試の結果が見つからない、悠の緊張がいつまでもほぐれない、特技のピアノも披露してくれない、挙句の果てには、算数の問題を出すと全て110と答える始末。そんな不自然なことだらけの中、片桐は見つかった模試の中で、最もおかしな点に気付いてしまう。

真相解説

片桐がみつけたのは、模試に書かれた名前で、そこには“ヤノハルカ”と書かれていました。つまり、矢野悠の悠はユウではなく、ハルカと読みます。片桐は子供のことをユウと呼んでいましたが、これを母親と子供は訂正しませんでした。

片桐の前に現れた母親は偽者で、その人物は桂田恵子という近所に住む女性でした。本物の矢野真理は桂田に殺されており、殺人が起きたちょうどそのときに、片桐が訪ねてきたという状況でした。そして、母親だけではなく、子供も偽物です。この子は空き巣で、殺人犯の桂田に捕まり言いなりになっていました。110と答え続けたのには、警察に110番してくれ、という意味が込められていたようです。なお、本物の悠は数年前に事故で亡くなっています。母親は息子の死を受け入れらず、生きているように振舞っていました。

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ヤリモク

美容師の僕(42歳)は“ヤリモク”のため、マッチングアプリで数多くの女性と知り合い、実際にヤッてきた。僕には妻と娘がいて、どうやら娘もマッチングアプリでパパ活をしているらしい。血は争えないのか、などと思いながら、今回は、マナという女性と知り合い、リアルで会うことになった。これで7人目の女性である。

登場人物
名前 説明
主人公。42歳の美容師
ヤリモクでマッチングアプリを使っている
美雪 主人公の娘。大学3年生
奈々子 主人公の妻。娘を心配している
マナ 主人公の今回の相手

ネタバレ

娘似のマナとの関係は、面白いほど上手く進んだ。マナはマッチングアプリで知り合った相手を殺すという連続殺人事件を気にしていた。被害者は既に6人らしい。それでもなんとか、マナとの関係は、最終局面に辿り着いた。シャワーを浴びる。いろいろ思い返しつつ、風呂場を出ると、そこには見知らぬ男がいた。美人局か。

真相解説

主人公の“僕”が連続殺人の犯人です。主人公はヤリモク(殺る目的)のためにマッチングアプリを利用していました。動機は娘のパパ活をやめさせるためです。
主人公は美人局に気付き、マナと男を殺害します。罠に気付くきっかけとなったのは、シャワーの位置、ドライヤー、お湯などで、これらのことから主人公はマナの家ではないという結論に達します。最後は、主人公が殺した男の携帯に美雪からの連絡が届き、娘も美人局をやっていたことが判明します。

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パンドラ

連続幼女誘拐殺害事件の犯人・宝蔵寺雄輔に似ている翼。彼には、妻の香織と、真夏という娘がいた。真夏は不妊治療の結果やっと授かった子供だった。夫妻はどちらも理系の研究者だったのだが、娘の真夏は文系のスポーツ万能タイプという人物で、夫妻には似ておらず、性格もまるで違っていた。

ある時、翼は妻の快諾のもと精子提供を始める。理由は、不妊で悩んだ経験があったからだった。そんなわけで翼は、美子という女性に精子を提供することになる。提供までの流れはやけに円滑だったのだが、妊娠の連絡以降、音沙汰なく、美子からの連絡は途絶えてしまう。だが、15年後のある日、翔子という14歳の女の子が翼の前に現れる。翔子はどうやら美子の娘らしいのだが…。

登場人物
名前 説明
主人公
香織 翼の妻
真夏 翼と香織の娘。高2
美子 翼が精子を提供した女性
宝蔵寺雄輔 連続幼女誘拐殺害事件の犯人

ネタバレ

翔子の母親である美子は、連続幼女誘拐殺人犯の宝蔵寺の妻だった。宝蔵寺逮捕の前の日に、宝蔵寺と関係してしまった美子は、生まれてくる子供が殺人犯の娘になってしまうことを恐れていた。そこで美子は宝蔵寺にそっくりな翼に精子提供を依頼する。15年後。翔子は宝蔵寺と翼のどちらが父親なのかを確かめるために、翼を訪ねていた。そして、翼の血液検査の結果、翔子の父親は翼であることが判明する。

真相解説

翼は自分の血液型がA型だと思っていましたが、血液検査を受けたことで、B型であることがわかります。妻の香織はB型で、娘の真夏はAB型です。B同士の夫妻からAB型の子供は生まれないので、真夏は翼の血をわけた子供ではないかもしれない、という可能性が浮上します。真夏の血液型は間違いないようなので、香織の血液型が間違っているのか、それとも、A型の誰かから精子提供を受けていたのか、などが考えられますが、翼は真相を確かめようとはせず、物語は終わりを迎えます。

三角奸計

桐山は大学時代からの友人である茂木と宇治原に、リモート飲み会で久々に会うことになった。誘ったのは大阪在住の茂木で、唯一の既婚者だった。宇治原には婚約中の彼女がいたが、宇治原が大阪に転勤となり、上手くいっていない。桐山にはマッチングアプリで出会ったミナミという相手がいたが、ミナミは不倫中らしく、堂々と話せる恋愛話ではなかった。そのミナミの婚約相手は仙台に転勤になっているらしい。

茂木と宇治原が暮らすマンションは隣同士で、ベランダから手を振ればみえるほど近くに住んでいた。茂木が提案した東京と大阪ならUberEatsの配達はどちらが早いかというゲームなどで盛り上がっていると、宇治原が桐山にこっそりとあることを伝える。茂木が宇治原の彼女の浮気相手かもしれない。

登場人物
名前 説明
桐山 主人公
茂木 桐山の友人。営業
宇治原 桐山の友人
有村ほの香 宇治原の婚約者

ネタバレ

宇治原は自分の彼女のスマホにGPSアプリを仕込んでいた。そのアプリによれば、宇治原の彼女は茂木の部屋へと向かっているらしい。カッとなった宇治原が殺意を露わにする。片桐はそれを止めようとするが、宇治原に彼女の写真をみせられ、それがミナミであることに気付く。その直後、東京にある片桐の部屋にミナミがやって来て、なぜか風呂場から宇治原が姿を現す。

真相解説

宇治原の婚約者というのは、ミナミのことで、浮気相手は片桐でした。ミナミは偽名で、彼氏が仙台に転勤しているというのも嘘です。
宇治原と茂木は共謀して、片桐に罠を仕掛けていました。大阪にいると思われていた宇治原は東京にいて、リモートの映像は録画でした。UberEatsのゲームをやったのは、片桐の部屋を特定するためです。

#拡散希望

チョモこと渡辺珠穆朗瑪は匁島(もんめじま)に住む小学生。チョモの両親は子育てのために、島に移住していた。島には他に、移住組の桑島砂鉄とルーこと安西口紅、そして、島生まれの立花凛子という小学生も生活していた。島唯一の子供である4人は、島民に可愛がられていた。

ある日、凛子が結成10年目の人気YouTuber「ふるはうす☆デイズ」について話し始める。凛子は最新のスマホを持っていたが、他の子供達はそんなものを持っていなかった。チョモが母親にスマホのことを話すと、母親は凛子とはもう遊ばない方がいい、なんてことを言い出すのだった。そして、島にやって来た田所という人物が、子供達と接触したあと、本島へ戻って殺害されるという事件が発生する。この事件をきかっけに、島民たちは子供達に対してよそよそしくなってしまうのだった。

登場人物
名前 説明
渡辺珠穆朗瑪
わたなべ・ちょもらんま
主人公
テレビを1日30分。“報告の時間”がある
立花凛子
たちばな・りんこ
島生まれの小学生
桑島砂鉄
くわじま・さてつ
島に移住した小学生
安西口紅
あんざい・るーじゅ
島に移住した小学生で、お金持ち。愛称はルー

ネタバレ

凛子はチョモに何かを伝えようとするのだが、ルーが現れ、何も語らずに凛子はその場を去ってしまう。そしてある日、突然ルーがチョモの家にやってくる。このとき、チョモの両親は、ルーの両親に呼び出されて不在だった。チョモとルーが話していると、今度は、18時12分に、ルーの親からルーに連絡があり、ルーは帰ることになる。この日、凛子が崖から落ちて死亡し、事故なのか、他殺なのか決着がつかない状況に陥ってしまう。

真相解説

「ふるはうす☆デイズ」はチョモや砂鉄、そして、ルーの両親達でした。ちょもらんま、という名前などは動画のネタになっていたようです。このことを知っていたのはルーや島民だけでしたが、凛子がこれに気付いたため、殺されてしまいました。なお、田所はいわゆる暴露系Youtuberで、彼は「ふるはうす☆デイズ」のファンに殺されました。
真相に気付いたチョモと砂鉄は、最後、ルーを殺すか殺さないかを決めるという過激な配信を始めます。

感想

 読んでいる最中に展開や結末が予想できるのですが、それは罠で、さらに上をいくオチが用意されている印象でした。動画配信、リモート、マッチングアプリ、不妊などなど、昨今の流行りがテーマになっているので、読者のターゲットは若い人達なのかもしれません。短編ということもあり、とても読みやすいので、まだミステリなどを読み慣れていない方にオススメできる本だと思います。

皆さんの感想には『#拡散希望は本当に起こりそうだ』という内容の書き込みもいくらかありました。子育てをネタにして動画を投稿し、それがかなり行き過ぎていたという物語なわけですが、ユーチューバーというのは、それが実際に起きそうだと思われているようです。

考察

 #拡散希望は島暮らしのある小学生がスマホを手にし、その直後に謎のユーチューバーが島に現れるという物語で、そのユーチューバーが本島に戻って殺害されます。こんなあらすじからは予想できない展開や結末が待っている――などと書いてこの下にアマゾンのリンク何かを貼ると、購入へと誘導しているとしか思えないわけですが……。

[ネタバレ注意]真相については触れませんが、ストーリーはシャーロック・ホームズの「赤毛組合」に似ています。自分の家で何やら起きているようだけどそれに気付かない、といった感じです。赤毛は当事者がホームズに依頼しましたが、#拡散希望は当事者が解決します。

みんなの感想

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「真相をお話します」レビューをまとめた図

個人的には

 個人的には拡散希望、もしくは、惨者面談が好きという方が多いようです。

短編なので、とても読みやすい。どの作品も、想像した結末のさらにその先の結末が用意されている感じですが、個人的には「惨者面談」と「♯拡散希望」が面白かった。

いずれも、そうきたか!と思わずにはいられないオチでした。個人的には惨者面談と#拡散希望が好き。

ミステリーをよく読んでいる人は、オチをある程度予測できる気がします。過度な期待はせず、先を読んだり、推理もせずに、気軽に読むのがいいと思います。個人的には、やっぱり#拡散希望が好きだったかな。

まとめ

 結城真一郎著「#真相をお話しします」について、あらすじ、みんなの感想、ネタバレなどをまとめました。この作品は、2023年本屋大賞10位に輝いており、さらに、収録されている5つの短編のうち「#拡散希望」は第74回(2021年)日本推理作家協会賞短編部門を受賞しています。私は短編集「#真相をお話しします」ではなく、ザ・ベストミステリーズ2021で「#拡散希望」を先に読んだりしました。

文庫化

まだ文庫版は発売されていません。単行本の発売が2022年6月でしたので、文庫化は2、3年後の2024年か2025年毎頃になると予想されます。

テレビドラマ化

2024年3月末時点で、テレビドラマ化の発表はありません。ドラマ化されるかどうか正直わからないところですが、短編で、それぞれの話に繋がりがあるわけではないので、連続ドラマには向いていないように思います。ドラマ化されるとしたら、世にも奇妙な物語のような形式かもしれません。

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