no murder, yes life
金田一耕助

獄門島|あらすじ・ネタバレ解説・相関図【犯人・キャスト】

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 「獄門島」のあらすじ、ネタバレ(真相や犯人)、感想などをまとめています。原作は横溝正史氏の推理小説で、東西ミステリーベスト100の1位に輝いている傑作ミステリーです。映画やドラマなどで映像化もされており、2016年11月にはNHKで長谷川博己さん主演のドラマが放送されました。

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あらすじ

 1946年・昭和21年9月下旬――金田一耕助は船で瀬戸内海に浮かぶ獄門島へと向かっていた。訪島の目的は、金田一の戦友であった鬼頭千万太(きとう・ちまた)の訃報を伝えることにあった。

 終戦直後の1945年、マラリアに罹った鬼頭千万太は引き揚げ船で、本陣殺人事件を解決した名探偵の金田一に獄門島へ向かうよう頼んでいた。千万太の懸念は島で暮らす3人の妹のことで、三姉妹の死を予期しているようだったのだが、船の中で息を引き取ってしまう。

 鬼頭千万太の出身である鬼頭家は漁業主なのだが、本鬼頭(ほんきとう)と分鬼頭(わけきとう)に分かれて、対立していた。死んだ千万太は本鬼頭の本家の人間で、三姉妹は腹違いの妹だった。三姉妹長女の名前は月代(つきよ)、次女が雪枝(ゆきえ)で、末っ子の三女は花子(はなこ)。そして、千万太の父親である鬼頭与三松(きとう・よさまつ)は本鬼頭の当主。なのだが、精神的におかしくなってしまい座敷牢に幽閉されていた。そんな与三松を獄門島にある千光寺の住職、村長の荒木真喜平(あらき・まきへい)、そして、島の漢方医である村瀬幸庵(むらせ・こうあん)が面倒をみているという。

 千万太には鬼頭一(きとう・ひとし)という名前のいとこもおり、一は本鬼頭の分家の出だった。一も、千万太や金田一と同様に、戦地へと赴いたのだが、近々獄門島に戻ってくるという報せが届いていた。そんな一には、早苗(さなえ)という妹がおり、彼女は美人でしっかり者の女性だという。

 金田一が獄門島に到着してから10日以上が経過し、戦争のために国に提供された千光寺の釣鐘が、そのままの姿で返還された。同じ日に、千万太の戦病死に関する一報が届き、葬儀が執り行われる運びとなった。

 葬儀の夜、三女の鬼頭花子が行方不明となる。住職の了然(りょうねん)が指揮をとり、捜索が開始されるのだが、花子の姿はどこにも見当たらなかった。一緒に捜索していた金田一は千光寺へと戻る途中で、坊主の了沢(りょうたく)と潮つくりの名人である竹蔵(たけぞう)と合流する。その後、了然の提灯のあかりが寺へと向かったのを見届けて、金田一達も境内へと進むのだが、そこで、花子の死体をみつけることになる。花子は寺の庭にある古い梅の木に、逆さまの状態で吊るされていた。

 死体発見後、住職の了然が静かに念仏を唱えていたのだが、途中で「きちがいじゃが仕方がない」ともつぶやいていた。この言葉を耳にした金田一は、「きちがいじゃが」ではなく「きちがいだから」ではないかという疑問を抱く。了然は与三松が発狂したことを知っているのだから、花子殺害の犯人が与三松であると考えていてもおかしくない。つまり、きちがいは与三松のこと、ということになるのだが、そうであるならば、やはり「きちがいじゃが」というのはおかしい。

 翌日、千光寺で目を覚ました金田一は屏風に書かれた俳句を目にしつつ、残された姉妹の殺害を警戒していた。ところが、清水巡査に犯人扱いされて捕まってしまい、留置場へと入れられてしまう。すると今度は、次女の雪枝が首を絞められて殺されているのが見つかる。雪枝の死体は返還された釣鐘の中に押し込められていた。

 雪枝殺害に関して完璧なアリバイがある金田一は釈放され、すぐさま現場へと向かう。現場には了然がおり、了然は「むざんやな 冑(かぶと)の下の きりぎりす」と口にしていた。

登場人物・キャスト

登場人物とキャストをまとめます。映像化された作品は映画とテレビドラマを含めて7作品ほどあります。ここでは、2016年に放送されたNHKドラマのキャストをまとめています。

名前
読み
NHKドラマ
2016年
説明
金田一耕助
きんだいち・こうすけ
長谷川博己 本陣殺人事件を解決した名探偵
亡くなった鬼頭千万太のため、獄門島へと赴く
鬼頭千万太
きとう・ちまた
石田法嗣 本鬼頭本家。金田一耕助の戦友
マラリアと栄養失調により復員船の中で死亡
鬼頭月代
きとう・つきよ
堀田真由 本鬼頭本家。千万太の異母妹で長女
三番目の被害者
鬼頭雪枝
きとう・ゆきえ
秋月成美 本鬼頭本家。千万太の異母妹で次女
二番目の被害者
鬼頭花子
きとう・はなこ
吉田まどか 本鬼頭本家。千万太の異母妹で三女の末っ子
最初の被害者
鬼頭与三松
きとう・よさまつ
山崎銀之丞 本鬼頭本家の当主。千万太や三姉妹の父親
発狂し座敷牢に幽閉されている
鬼頭一
きとう・ひとし
萩原宏樹 本鬼頭分家。千万太のいとこ
鬼頭早苗
きとう・さなえ
仲里依紗 本鬼頭分家。一(ひとし)の妹であり、千万太のいとこ
美人でしっかり者と評判
了然
りょうねん
奥田瑛二 千光寺の住職で、金田一が獄門島で世話になる人物
荒木真喜平
あらき・まきへい
菅原大吉 獄門島の村長
村瀬幸庵
むらせ・こうあん
綾田俊樹 獄門島の漢方医、村医者
鬼頭嘉右衛門
きとう・かえもん
瑳川哲朗 本鬼頭の先代当主。戦時中に病死する
与三松の父で、千万太の祖父。了然、荒木、村瀬とは交流があった

相関図

鬼頭家の人物を中心に、主要登場人物をまとめると次のようになります。
獄門島の登場人物相関図

俳句

作中に登場する俳句は次の通りです。

作者 補足
松尾芭蕉 むざんやな
冑の下の
きりぎりす
命を救った木曽義仲と戦い、
戦死した斎藤実盛を詠んだ句
松尾芭蕉 一つ家に
遊女も寝たり
萩と月
同じ宿に遊女と泊り合わせた芭蕉が詠んだ句
月が庭の萩の花を照らしているという意味がある
宝井其角 鶯の
身をさかさまに
初音かな
ウグイスの身軽な動きと、
初音(その年の春に初めて鳴く声のこと)を詠んだ句
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解説

復員船で亡くなった鬼頭千万太は、亡くなる直前に「俺が生きて帰らなければ、3人の妹たちが殺される……」とつぶやいており、実際に、末っ子の花子が殺されてしまいます。現場に残された煙草や住職の“きちがい”発言から、犯人は狂人と噂の鬼頭与三松に思えます。その後、花子殺しを疑われた金田一耕助が捕まり、留置場にぶち込まれている間に、次女の雪枝が殺されてしまいます。雪枝の死体がみつかった後の展開をまとめると次のようになります。

 磯川警部が島へとやって来て、金田一や島民に復員兵の海賊が逃げ込んだという情報をもたらします。そして、その復員兵を探すための山狩りが始まります。

 一方、金田一は鬼頭家の過去を知る人物から、与三松の父である嘉右衛門(かえもん)と、与三松の後妻であるお小夜(さよ)の関係を知ることになります。与三松はお小夜を後妻としましたが、嘉右衛門との折り合いは悪かったようで、嘉右衛門とお小夜は激しく対立していました。気の強い性格だったお小夜ですが、徐々に孤立していき、最後は精神的に病んで亡くなってしまいます。与三松が発狂して座敷牢に閉じ込められるようになったのは、お小夜が死んだ後のことでした。なお、嘉右衛門も戦時中に病死しています。

 そうこうしているうちに復員兵がみつかります。しかし、山狩りをしていた警察と銃撃戦になり死亡してしまいます。銃で撃たれて死んだと考えられていた復員兵ですが、のちに死因は頭を強打したためであることが判明します。鬼頭早苗は復員兵が兄の鬼頭一であると考えていたようですが、全くの別人で、誰なのかはわからずじまいとなります。

 謎の復員兵が死んだ夜に、雪枝の通夜が執り行われ、今度は、屋敷の祈祷所で祈祷をしていた月代が何者かに殺されてしまいます。月代は首を絞められてころされており、死体の周りには、萩の花が撒かれていました。

 月代の死をきっかけに、金田一は三姉妹の死が、屏風に書かれた俳句に見立てられていることに気付きます。屏風には俳句が三句かかれており、そのうちの二句は「むざんやな冑の下のきりぎりす」「一つ家に遊女も寝たり萩と月」でした。最後の一句は判読できない状態でしたが、それは「鶯の身をさかさまに初音かな」でした。

最終的に花子、雪枝、月代の三姉妹は殺されてしまいます。のちに見立て殺人であるという認識が強まり、同一犯による連続殺人であると考えられますが、三件すべての犯行が可能なわかりやすい人物はいないようです。

なぜ、わざわざ手間をかけて見立て殺人を実行したのか、というのも謎めいていますが、動機もまた不明です。鬼頭家の本家の人間である月代、雪枝、花子が死んで得をする人物がいるのか、ということを考えるのが定石ですが、それらしい動機は見当たりません。本家と対立している分家が怪しいといえば怪しいですし、姉妹の母親であるお小夜と対立していた先代当主の鬼頭嘉右衛門も怪しいです。ただし、お小夜も嘉右衛門も、既に亡くなっています。

その他、謎めいている内容をまとめると次のようになります。

  • 鬼頭一はどこにいるのか
  • 死んだ復員兵は何者なのか
  • 「きちがいじゃがしかたがない」の真意
  • 「俺が生きて帰らなければ、3人の妹たちが殺される」の真意
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真相

月代、雪枝、花子を殺した犯人は同一人物ではありません。最初に、鬼頭花子を殺した犯人は住職の了然、鬼頭雪枝を殺したのは村長の荒木真喜平、鬼頭月代を殺したのは漢方医の村瀬幸庵でした。復員兵の海賊を殺したのは了然で、理由は犯行を目撃されたためでした。

了然、荒木、村瀬はいわゆる実行犯で、犯行を計画したのは先代当主の鬼頭嘉右衛門です。事件の黒幕である嘉右衛門は三姉妹を殺害して、鬼頭一に鬼頭家を継がせようとしていました。千万太が死ぬと、三姉妹が鬼頭家を継ぐことになりますが、嘉右衛門は姉妹を頼りなく思っていました。これにお小夜との対立が加わり、千万太が死んだときは三姉妹を殺すと決意していました。

実行犯となった了然、荒木、村瀬は嘉右衛門に“七生(七代)まで祟る”と脅され、いやいやながらも犯行に及びました。三人は当初、嘉右衛門との約束を反故にするつもりでいました。その言い訳は、嘉右衛門によって計画された見立て殺人に必要な釣鐘が戦争に使われて手元にないから、でしたが、残念なことに釣鐘がそのままの形で返還されてしまいます。

釣鐘があったとしても、鬼頭一が死んでいれば、殺人を犯す必要はありませんでした。しかし、一の生存と帰郷が島に伝わってきてしまい、三人は三姉妹を殺さなければいけなくなってしまいます。

手口

了然は鵜飼をだしに使って花子を呼び出し(花子は鵜飼に気があった)、首を絞めて殺害し、その後、死体を境内へと運びました。死体を運んだのは、実は、金田一達が了然の提灯をみたときでした。境内に落ちていた煙草は、海賊が落としたもので、ご飯を食べたのも、この海賊です。なお、煙草は本鬼頭の屋敷に忍び込んで、与三松の座敷牢から盗んでおり、このときの様子を早苗が目撃していました。早苗はその人物が兄であると思い込み、海賊の足跡を隠すなどしていました。

荒木真喜平は舞台の小道具として使われていた釣鐘を、本物の釣鐘に被せて、死体が釣鐘に入れられた時刻を誤魔化しました。釣鐘を起こして死体を入れるのは不可能であっても、軽い小道具の釣鐘を捨てるくらいであれば、簡単にできます。

村瀬幸庵は手を骨折していたため、月代の絞殺は不可能に思えます。しかし、祈祷所の垂れ幕を使うことで、片手でも犯行が可能でした。なお、垂れ幕はあらかじめ手ぬぐいの布にすり替えておき、犯行後に切って、一枚の手ぬぐいにみせています。

きちがい

花子の死体がみつかった時、殺人犯である了然が「きちがいじゃがしかたがない」とつぶやいていましたが、きちがいは“季違い”で、その意味は、俳句の季語と今の季節が合っていないということでした。

俺が生きて…

千万太は復員船で「俺が生きて帰らなければ、3人の妹たちが殺される…」とこぼしていましたが、千万太は父・嘉右衛門の計画を知っていました。出兵時に、嘉右衛門から直接伝えられていたようです。

結末

鬼頭一は戦死していました。鬼頭一が帰郷するというのは、実は、復員詐欺を行っていた男の嘘でした。

嘉右衛門の遺言に、一が死んでいる場合は三姉妹が婿をとると記されていたため、そもそも、三人は姉妹を殺す必要などありませんでした。真相を知った村長の荒木は島から逃亡、気の弱かった村瀬は気が狂ってしまい、了然は卒倒して死亡します。

最終的に本鬼頭家は鬼頭早苗が継ぐことになります。早苗に惚れていた金田一耕助は早苗を東京へと誘いますが、残念なことに、断られてしまいます。

ネタバレ

事件の犯人やトリックを簡単にまとめます。

項目 説明 補足
犯人1 了然 鬼頭花子と復員兵(海賊)殺害の犯人
犯人2 荒木真喜平 鬼頭雪枝殺害の犯人
犯人3 村瀬幸庵 鬼頭月代殺害の犯人
トリック1 見立て殺人 同一人物による連続殺人のようにみえて実は犯人が違う
トリック2 共犯 犯行の立案者と実行犯が異なり、実行犯も一人ではない

原作小説とドラマの違い

獄門島は映画やドラマで数多く映像化されており、それぞれに原作との違いがあります。大きな違いは“きちがい”の扱いとなっており、放送上好ましくない言葉であるため、登場しない場合が多いです。この言葉の取り扱いをまとめると以下のようになります。

放送・メディア 取り扱い 補足
1977年ドラマ 「きがかわっているが仕方がない」 古谷一行さん主演
1990年ドラマ 「季が違うが仕方がない」 片岡鶴太郎さん主演
1997年ドラマ 台詞そのものが削除されている 古谷一行さん主演
2003年ドラマ 台詞そのものが削除されている 上川隆也さん主演
2016年ドラマ 「きちがいじゃが仕方がない」 長谷川博己さん主演

2016年NHK版

2016年放送のNHK版「獄門島」(長谷川博己さん主演)は、原作を再現したようなストーリーとなっており、“きちがい”という言葉がそのまま登場しています。

原作に忠実なドラマですが、細かな違いはあります。例えばドラマでは、釣鐘と戦死の知らせが島に届くまでの期間が短くなっています。その他、原作に登場する人物(勝野や清公)は登場せず、この人物達が果たす情報伝達の役割は巡査などに統合されています。やや大きな違いは、金田一耕助のキャラクターで、ドラマは原作とは違い、攻撃的かつ挑発的な人物になっています。物語のラストには、金田一が犯人をショック死させたようなシーンも登場します。

ドラマの最後の最後に登場する「悪魔が来りて笛を吹く、助け請う」という電報もドラマオリジナルで、これは、次回作を予告するようなシーンとなっています。

ロケ地

2016年放送のNHKドラマ(長谷川博己さん主演)について、ロケ地をご紹介します。このドラマの撮影は主に、新潟県で行われています。

ロケ地 マップ 補足
飯塚邸 Google Map
清水寺(せいすいじ) Google Map ラストシーンに登場
佐渡金山 Google Map

獄門島のモデルとなった島は、小説に書かれた内容から、岡山県笠岡市の六島(むしま)だと考えられています。六島は瀬戸内海に浮かぶ島で、現在も数十名の方が暮らしています。
参考資料:六島 (岡山県) – wikipedia

拡大地図を表示することで外観などを確認できます。

感想

まず「獄門島」というタイトルが不気味です。地獄の門の島、ということだと思いますが、不吉なので住みたくはないです。天国の門でも遠慮したいです。そんな島には、おかしくなって座敷牢に閉じ込められている人がいて、仲の悪い分家がいて、さらに海賊もやって来ます。不安なことが多すぎる島なわけですが、こういった状況が面白かったりもします。もちろん、当事者にはなりたくはありません。

みんなの感想

 原作小説の口コミを調べてみると、日本の推理小説、意外な犯人、初めて読んだ横溝正史作品などが書き込まれていました。

いわくありげな本家と分家、個性的なキャラクター、不可解で残酷な殺人、意外な犯人などなど。もう本格ミステリの要素が全て詰まっている。映画は何本か見てるけど、もちろん本も面白い。ほんとにおもしろい。

終戦後の空気と閉鎖的な島の雰囲気がつくり上げる陰鬱な世界観は、現代ミステリでは味わえない独特の苦味とノスタルジイが感じられる。

昭和初期の瀬戸内海の狭い島での独特の風習や複雑な人間相関からなる描写の表現は緻密で、改めて次の物語も読みたいと思わせる素晴らしい内容であった。

ビブリア古書堂で取り上げられていた本ということで、これをきっかけに、恥ずかしながら金田一耕助を初めて読みました。金田一耕助のもじゃもじゃ頭とよれよれの和服はこんなふうに書かれていたのかと(笑)なかなか読む時間が取れなかったけどスラスラ読めました。トリックは初歩的な感じがしたけれど、それは推理小説の礎として、多くの作品に使われているからだと思います。

NHKのドラマ(長谷川博己さん主演)で興味をもって、今さらながら初横溝作品。文体・キャラ・展開いずれも、ザラザラ、エキセントリックな感触なんだけど、リーダビリティ抜群で解りやすくて魅力的。あっという間に読み終えてしまった。情景と心理描写のワーディングも難解すぎず風流で、日本語の美しさも楽しめました。

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